遺言執行者とはなにか弁護士が分かりやすく解説

1 遺言執行者とは何か。

遺言を作成するにあたって、そもそも遺言執行者を付けるべきなのか、遺言執行者を誰にすべきなのか、かなりわかりにくいと思います。

遺言執行者をわかりやすく説明すると、遺言の内容を実現する権限と義務のある人となると思います。例えば、遺言で、不動産を死後売って現金にして寄付してほしい、といった内容を書き残したとして、これを「誰かが」実際に不動産を売る、遺言書通りにお金を振り分けるといった作業が必要になります。

これを実際に、遺言を書いた人の死後に行う人が遺言執行者です。

2 遺言執行者の役割とは

遺言者の役割は、遺言で指定された特定の財産を、その名宛人に相続させたり、寄付したり、引き渡すことです。それに付随して、遺言の対象財産を適切に管理し、例えば動産の占有を取得したり、貸金庫を開けて中の物を出したり、預貯金を解約したりします。また、財産目録を作成し、相続人へ交付します。
 
 

3 遺言執行者の必要性とは

遺言執行者を付けたほうがいい場合は、例えば遺言を残そうとしている人の相続人が遠隔地にいて、遺産を取得する手間暇が大変になりそうな場合、例えば高齢の妻に遺産を残すなど、相続人が年老いている場合、相続財産のうち、亡くなってから売ってほしい不動産がある場合、など、多岐にわたります。
もし、それなりの遺産がある場合、県外などに遺産が分散している場合、生命保険の受け取りや、不動産の管理など、遺産の引き渡しについての手続きが複雑になりそうな場合は、専門家を遺言執行者に選任しておくことをお勧めします。
 
 

4 遺言執行者は誰に指定すべきか

遺言執行者として指定すべき人については、相続人の一人でも構いません。遺言執行者になれない人は、未成年者と破産者だけです。もっとも、遺言執行者に就任した場合は、複雑な法律知識が必要で、遺言執行者就任通知や財産目録の作成や善管注意義務などを負います(民法1012条1項および3項)ので、専門家である弁護士に依頼したほうが無難です。
 

5 遺言執行者の権限について

遺言執行者の権限は、不動産の引き渡し、貸金庫を開けて内容物を引き取る、遺言執行者名義で預金口座を開設し、預貯金などを預かるなどを行います。
 

6 遺言執行者の代理人

前述のとおり、遺言執行には相当な法律的な知識が必要です。仮に遺言執行者に指定されてしまっていた場合はどうすればいいでしょうか。平成30年法改正前には、遺言執行者はやむを得ないと考えられる事情がない限り代理はできませんでした。もっとも個別の事務の代理という形で遺言執行の事実上の代理を弁護士が行っていました。

新法下では、遺言者が別段の意思表示をした場合を除き、自己の責任で第三者に任務を依頼できるようになりました。

ですから、仮に遺言執行者に選任されていた場合は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

7 遺言執行の費用

遺言執行の費用は、遺産から出されます。当事務所の場合は、遺言執行の手間を考慮し、遺産の2~4%程度をいただくことにしております。

8 まとめ

遺言書を作成しても、被相続人の死後に、その意思の通りに遺言を執り行う人がいなければ、相続がうまくいかない可能性もあります。そこで、相続財産が多額である場合などには、遺言執行者をあらかじめ定めておいて、被相続人の死後に適正に遺言通りの内容を実行させるようにすることをお勧めします。

遺言執行者は、不動産の登記手続き、株の名義書換、預金の分配などの手続きを行い、遺言が適正に行われるように活動します。また特定不動産の売却手続きなども行います。

遺言執行の費用は、遺言者が遺した財産から支払われることになります。

遺言執行者の指定の記載の仕方

遺言執行者を遺言書で記載して指定する場合は、下記のような記載になります。

遺言者は次の者を遺言執行者に指定する。

住所

職業

氏名

生年月日

遺言執行者は、本遺言内容実現のため、貯金、預金、有価証券等の名義変更、現金化等に関する一切の権限を当然にあわせ有する。

遺言執行の費用については、こちらをご覧ください