遺言書を作るメリット
1 相続トラブルの防止
遺言書を作るメリットは何でしょうか。遺言書の何よりも大きい効果としては,ご自身の死後における相続トラブルの防止ということがあります。
これはけして財産が多い場合だけでなく,財産としては,実家の家建物くらいしかないという場合でも,法定相続人任せにした結果,思わぬ関係者の助言などで,残された相続人らが互いにいがみ合うこととなり,財産わけのために,死後,実家の家建物を売却せざるを得ないというような事態に陥るケースなどもあったりします。
このような事態を防ぐために,被相続人の意思はこうだったのだということを,書面で,しっかりと遺しておくことは非常に大きな意味を持ちます。適切な遺言書が残されていないようなケースの場合,相続人となる子や孫は皆,「親はこう考えていたはずだ。」とそれぞれ違った意見を持っていがみ合うことになります。そのため,遺言書は最後の最後にできる親としての意思表示であるともいえるかと思います。
2 遺留分に配慮して相続させることができる。
遺言書を作るメリットの一つとして,遺留分の問題があります。遺留分とは,被相続人の意思のよっても奪うことができない相続分です。例えば、ある相続人にだけ沢山の相続財産を上げてしまうと、生活に困ったりする相続人がいる可能性も考えて、相続分を少し取り返せる権利が遺留分減殺請求権です。
兄弟姉妹を除く法定相続人が遺留分権利者とされており,遺留分率は,直系尊属のみが相続人となる時は,被相続人の財産の3分の1,その他の場合は被相続人の財産の2分1とされています(民法1028条)。
例えば,自分の全ての財産をある特定の方にあげたいと思ったとしても,法定相続人の遺留分についてはこれを害することが出来ないということになりますので,遺言書を作成する場合には,この遺留分を意識して,特定の方に多く財産を渡したいと思ったとしても,その他の相続人の方の遺留分を侵害しないように慎重に検討しながら,作成する必要があるわけです。
特に、会社経営者が会社の株を特定の相続人に相続させて会社を継がせたいと考えている場合は、遺言により、しっかりと遺留分を意識した財産の配分を考えなければいけません。具体的には、特定の相続人に株式を継がせるのであれば、他の相続人には遺留分を侵害しない範囲で預金など他の財産を分けるように指定し、遺言が効力を有したときに遺留分減殺で株式が他の相続人に分配されることを防ぐ必要があります。
3 祭祀承継(さいししょうけい)をするものを決められる。
遺言書を作成するメリットは、自分のお墓を継がせたい相続人に祭祀承継者を定めることができます。沖縄においてはトートーメーを誰に継がせるか,お墓の管理を誰に任せるかということがとても重要ですが,近年,これまでのように簡単に決まらなくなってきている事情があります。そのような場合に,遺言書において,きちんと祭祀承継者を決めて,また,その祭祀承継者に対して,必要な財産を任せるということを決めておくことが可能になります。
4 相続人の廃除(民法893条)
遺言書を作るメリットとして、推定相続人を排除する意思を表示することが出来るという事があげられます。推定相続人とは、現在の段階で相続が発生したときに相続人になるだろうという人です。
相続人の廃除とは、遺留分を有する推定相続人について、被相続人対して非行や虐待や侮辱がある場合に、その相続人の相続資格を排除することです。
遺言で相続人を排除の意思表示をすることは可能ですが、その後、遺言が効力を生じた際に、裁判所に遺言執行者が推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければいけません。
従って、遺言書に相続人の廃除の意思表示をする場合には遺言執行者を指定しておく必要があります。また、相続人の廃除自体はなかなか認められにくいという事も意識し、いきなり遺言書で相続人を廃除するより、家族でよく話し合う事をお勧めします。
5 遺言執行者を指定する。
遺言執行者とは、遺言の内容を適正に実行するために選任された者です。遺言が効力を有した際には、遺言者は死亡しているため、これを速やかに実現させるために選任しておきます。
遺言執行者自体は、相続人などの中からも指定できますが、実際には預金の解約や登記名義の変更などの手続きをすることになりますので、相続財産が多額であり、例えば会社の株式などを相続させ事業を継がせるなど遺言効力が生じてから速やかな手続きが必要な場合には、弁護士などの法律家に委任するケースが多いです。遺言執行者の選任にお悩みの方は、弁護士法人ニライ総合法律事務所にご相談ください。
6 遺産分割の禁止
遺言によって、相続開始の時から5年間遺産の分割を禁止することが出来ます(民法908条)。例えば当面の間、分割しない方が利益がでるような財産を所有している場合などに、あらかじめ遺言によって、遺産分割をしないように定めることが出来るわけです。
もっとも、例えば遺言を記載した際には分割しない方が良かった財産も事情が変わった場合などで分割した方が良くなる場合などもあります。その場合、共同相続人の全員の同意があれば、先の遺言による分割禁止があっても、分割を実行することが出来るとされています。
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