第1 遺産分割調停とは
遺産分割調停は、家庭裁判所において、調停委員を交えながら、相続財産をどう分けるか相続人で話し合って決める手続きです。
相続は親族で話し合って合意できるのが一番望ましいです。
しかし、どうしても持分について譲らない当事者がいる場合には、それ以上親族で話し合いを続けても、いたずらに関係をこじらせるだけで解決が見込めない場合があります。
その場合、家庭裁判所での調停委員を交えて話し合いをする遺産分割調停という手続きがあります。
第2 遺産分割調停の流れ
(1)遺産分割調停って何を話し合う場所?
遺産分割は、①誰が(相続人の範囲)②何を(遺産の範囲)③どのような割合で(指定相続分、法定相続分を特別受益・寄与分で修正して算出した具体的相続分)④どのように分けるか(分割方法・特に不動産)を話し合う場所になります。
遺産分割調停では、話し合える内容と話し合えない内容があり、これから外れて関係ない話をしてしまうとなかなか調停が前に進みません。
遺産分割調停で話し合いの対象とできるものは、
①相続により取得した遺産(遺産要件)
②相続時に存在するもの(遺産要件)
⇒過去に売却した不動産、既に引き落とされて費消された過去の預金などは含まれません。
③分割時にも存在するもの(遺産分割対象要件)
⇒分割時までに費消してしまったものなどは含まれません。その代替物(現金)等があれば対象となります。
④未分割であるもの(遺産分割対象要件)
⇒被相続人の不当利得返還請求権などは、相続人の準共有(民法246条)ですが、民法899条で、その相続分に応じて分割債権とされるため、話し合いの余地なく分けられている状態となっています。
⑤積極財産である(遺産分割対象要件)
⇒負の財産(いわゆる借金)は含まれません。ただし、相続人全員の同意があれば、含めることができます。
の全てを満たす必要があります。
遺産分割調停の特に代理人がついていない調停においては、これらを満たしていない主張が延々と当事者間でなされる帰来がありますが、全く無意味です。
必ず、なにを決めることが出来るのか、何の話ができるのか意識して話し合いに出席するようにしましょう。
(2)これを持ち出すと調停が遅延する!!審判では必ずしも決められない事項
遺産分割調停は1年や2年、下手すると3年以上硬直状態になることがあります。それは、下記の遺産分割の対象とならない事項=揉めたら審判の対象にならない事項(ただし、同意があれば調停内で解決可能なので、調停委員さんも主張しないようにとは言えない事項)、を当事者がいつまでも主張し続けたり、ずっと後になってから持ち出したりするためです。
①使途不明金
②葬儀費用関係
③相続開始後の賃料当の配分
④相続人固有の共有不動産
⑤遺言の執行
⑥相続債務の整理や負担割合
⑦同族会社の経営権
⑧金銭消費貸借の問題
⑨祭祀承継
⑩遺産土地の境界の問題
これらの問題について、誰か一人でも相続人が反対するような場合は、いくら主張しても、調停審判の手続きでは決められないので、なるべく早く別の手続きを取ることを検討することをお勧めします。
第3 遺産分割調停で弁護士を付けるメリット(あなたの言い分を聞いてもらうには)
遺産分割調停・審判手続きにおいては、弁護士を付けるか否かによって、早期に解決できる可能性が広がるとともに、取得分も寄与分や遺留分や生前贈与の主張により数百から数千万円変わります。
沢山の遺産分割調停を扱ってきた感想としては、代理人をつけずに出席されている方たちのほとんどは裁判所や調停委員が、今何のために、何を聞いてきているのか、これから何の手続きをしようとしているのかすら理解できていない印象をうけます。
もちろん、調停委員さんも手続きの説明をしてくれますが、調停委員さんもどちらかの味方をするわけにはいかないので、かならずしも一方に有利になるような論点を教えてくれるわけではありません。
例えば、特別受益や遺留分や寄与分などは積極的に証拠を集めて裁判所に提出しない限りは認められないものです。相続人本人で遺産分割調停手続きを行う方の中には、このような主張ができることを知らないか、知っていて主張したけれども、有効な証拠が何なのかわからないまま、その主張が認められないという結果になっている事をよく目にします。
調停をしていて、裁判所が何の手続きをしているのか良くわからないというような状態であれば、少なくとも一度弁護士に相談することを勧めます。何を主張できるのか知るだけでも相続の結果は変わりうると思われます。
第4 遺産分割調停の申し立て
(1)遺産分割調停の申立の管轄
遺産分割調停の申立てる場合の土地管轄は、相手方の住所地(相手方が複数いる場合は、そのすべてに土地の管轄があります)又は合意で定めた家庭裁判所になります(家事法245条1項)
(2)遺産分割調停の申立書
遺産分割調停の申立には、遺産の目録や相続人全員の戸籍や申立に際しての様々な事情を書いた申立書等が必要になります。
遺産分割調停手続きの申立書は、裁判所のホームページでダウンロードできます。
(http://www.courts.go.jp/saiban/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_34/index.html)
書類の取得先
①戸籍関係書類、書類の附票・・本籍地の市区町村役場・戸籍担当係
②住民票関係書類・・・住所地の市町村役場・住民登録担当係
③登記簿謄本又は全部事項証明書、土地の構図、建物の平面図・・物件所在地の法務局、支部、出張所の不動産登記部門
④固定資産評価証明書・・・不動産所在地の都・県税事務所・又は市区町村役場・固定資産税担当係
(3)遺産分割調停にかかる期間
調停はおおよそ月に1回、半日ほどの時間をかけて行われます。
調停委員が各相続人の意見を聞いて相続財産の分け方について円満に解決するように調整を図ります。
もっとも、生前に不動産や資金の援助を受けている人がいるなど特別受益の問題がある場合や、逆に稼業を手伝った人、要介護度が高かった被相続人の介護を献身的に行った人がいてその分多くの取り分を主張したい人がいる場合など寄与分の問題がある場合、遺言書で一人の人に沢山の遺産が集中しているなど遺留分減殺請求権の問題がある場合、などについては、法律問題が複雑になるので、弁護士を付けた方が有効かつ適切な主張を行うことが出来ます。
是非沖縄の遺産分割に強い弁護士にご相談ください。
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調停の中でも話し合いがつかない場合には、裁判官が遺産分割について判断して審判を出します(遺産分割審判)。この審判が出れば、どんなに同意しない相続人がいても、相続の持分が決まるので、紛争の一応の解決ができると言えます。