相続登記の義務化
相続に関する法律が改正され、相続登記の義務化が始まると言われています。
そもそも、相続登記とはどのようなものなのでしょうか。そして法律改正によってどのような変化が起こるのでしょうか。
本ページでは、義務づけられた内容と、義務違反をしてしまった場合のリスクについて、弁護士が解説していきます。
(1)相続登記とは?
そもそも、相続登記はなんでしょうか。
まず、登記、とは、不動産(家や土地など)を持っている人が、所有者の名前や所有物件を登記簿に記録することを言います。
そして、相続登記とは、不動産を所有していた人が亡くなった場合、その不動産を相続した家族などが、所有者が変更になったことを登記簿に記録することを言います。
例えば、亡くなった親が土地を持っていて、そのお子さんが土地を相続した場合、お子さんが、土地の名義を、親御さんの名前から、ご自身の名前に変更する手続きがいるのです。
具体的には、その土地を管轄する法務局に対して、登記申請をする、という手続きを取ることとなります。
(2)相続登記の義務化とは?
それでは、相続登記の義務化とは何でしょうか。
実は、現在、不動産を相続しても、登記をすることは必ずしも必要とされていなかったのです。
そのため、相続で不動産を所有することになっても、登記をしない相続人が多くいました。
登記自体にお金がかかることや、登記手続きは馴染みがなく時間や手間がかかること、自分にあまり関係ない土地である場合などは危機感を持ちにくいというような事情があるためです。
そのため、所有者がわからない不動産が多くなってきてしまったのです。
例えば、親が死亡し、相続がされないままお子さんまで死亡してしまった場合、誰がその不動産の所有者なのか、家族や親戚ですら分からなくなってしまうことが多くあります。
登記をすることが非常に難しくなってしまったので、そのまま放置してしまう、というケースが沢山生じていたのです。
こういった不動産が増えると、その土地に不法投棄されてしまったり、その不動産を有効活用することができないといったケースが多発し、社会問題となっているのです。
そこで、2024年4月1日から、不動産を相続した人は、相続をしたことを知ったときから3年以内に登記しなければならない、というように、法律が改正されたのです。
これが、いわゆる相続登記の義務化と言われるものです。
(3)義務化がはじまるのはいつから?
では、この義務はいつからはじまるのでしょうか。どのような場合に、義務化の対象になるのでしょうか。
実は、2024年4月1日以降に相続が開始された場合(不動産を持っている人が亡くなった場合)だけでなく、過去の相続に関してもさかのぼって適用されるのです。
なお、過去にさかのぼって適用される分については、「施行日」または「不動産を相続したことを知ったとき」のいずれか遅い日から3年以内に登記申請する義務を負います。
そのため、相続登記義務化が開始される2024年4月1日以前に、不動産について相続が開始されたことを知っている相続に関しては、2027年4月1日までに登記申請をしなければならないということになります。
(4)義務に違反してしまうとどうなる?登記しようと思ったけど難しすぎて出来ない場合も何か罰則がある?
この義務に違反してしまうと、10万円以下の支払い義務が発生してしまいます。
しかし、「正当な理由」が認められた場合には、登記をしなくても支払いが発生しないことがあります。
具体的には、
・何十年も前に発生した相続で登記がされておらず、権利関係が複雑になってしまい、誰が所有者なのかを明らかにするためには、沢山の資料を収集する必要がある場合
・登記義務者が重病で、申請をすることが出来ない場合
・登記簿の情報と現状が違っているため、現地調査ができない場合
などです。
こういった例外的な事情がある場合は、支払いをしなくても良いことになります。
しかし、注意しなければ行けないのは、支払いをしなくて良い=登記義務を果たさなくても良いというわけではないのです。
では、正当な事情がないにも関わらず、登記が難しそうな場合はどうしたら良いのでしょうか。
(5)なにか救済方法はある?
義務を果たしたいけど、遺産分割で揉めていて、3年以内に登記するのはなかなか難しそう・・というケースで考えてみましょう。
救済方法として一つ考えられるのは、「相続人申告登記」と呼ばれる制度です。
今回の法改正では、義務化と同時に、より簡単に登記義務を果たすことができるような新しい登記制度が作られることとなりました。
これは、従来の登記手続きとは違っていて、いくつかの書類と、簡単な手続きで、相続が始まったことを申告すれば、一旦、登記義務を果たすことができるという制度です。
通常の相続登記と違うのは、
・登記をする際に必要なお金(登録免許税といいます)がかからない点
・戸籍などの提出でよい点
などです。
そのため、遺産分割で揉めていて、3年以内に決着がつかなさそうな場合は、とりあえず、「相続人申告登記」をしておくことをおすすめします。
もっとも、この「相続人申告登記」は、「相続登記」とは厳密には異なります。
そのため、遺産分割の揉め事がまとまった場合は、その時から3年以内にやはり相続登記をすることが必要になってくるのです。
(6)まとめ
このページでは、新たに施行される、相続登記の義務化について解説を行いました。
相続人申告登記が設けられたとはいえ、結局、いつかは相続登記をする必要があることに違いはありません。
登記制度については、法務局のホームページなどにも解説が載っていますが、相続は、登記という手続きだけが必要になるのではありません。
相続人間で揉めるケースも多く、遺産分割協議や、場合によっては裁判に発展することもあります。
親族同士で、いわゆる骨肉の争いになってしまうことを避けるためにも、弁護士を有効活用することをおすすめします。正しい専門知識を持っている冷静な第三者が入ることで、早めの解決につながることがあるのです。
相続でお困りの方や、相続登記に関して不安がある方は、ぜひお気軽に当事務所までご連絡下さい。