代襲相続と混同されやすい相続事例について

皆さんは、代襲相続という言葉を聞いたことがありますか?

相続が発生する際に、その相続人となるべき子が既に亡くなっている場合などに、その相続人である子(被相続人から見ると孫にあたる)が、代襲して相続するということから、そのように言われている民法上の規定です(民法第887条2項)。

 

具体的に説明しますと、

お亡くなりになった方(被相続人X・80歳)に長男Aさん(50歳)がいらっしゃったとして、Aさんが、何等かの事故または病気によって、Xさんより早くに亡くなってしまったとします。その場合、仮にAさんに,奥さんBさん(45歳)、お子さんCさん(20歳)がいらっしゃったとした場合、Xさんの相続が発生する時点においては、Aさんはいらっしゃらないのですが、Aさんの代わりに、お孫さんであるCさんが、Xさんの遺産を相続することになるというのが、代襲相続という考え方です。

 

 ここまでの説明は分かりましたでしょうか?

次に行きますよ。

 この代襲相続というのは、お孫さんであるCさんに相続権が発生するのですが、Aさんの奥様であるBさんには、相続権が発生しないというのが特徴です。

 代襲という名に表れているように、あくまでも代襲者にしか相続権が発生しないということになります。

 

これと似て非なるものに、こういう相続事例があります。

まず、Xさん(80歳)がいて、その長男Aさん(50歳)、その奥さんのBさん(45歳)、そのお子さんのCさん(20歳)がいる。

ここまでは全く同じ構成ですが、ここからが少し違う。

①Xさんがお亡くなりになって、その後、②Aさんがお亡くなりになったとします。

先ほどの代襲相続では①Aさんがお亡くなりになってから、②Xさんがお亡くなりになっているので、順番が違うということですね。まあ,通常はこちらの方が普通の順序です。

 

この場合、相続人はどうなるのかということです。

 

先ほどの代襲相続の相続事例の場合、Xさんの相続人は、お孫さんのCさんだけでしたね。

 

ですが、この場合は、Xさんの相続人は、Cさんだけでなく、奥さんのBさんも入ってくることになります。

何故でしょうか。

このケースの場合、Xさんが亡くなった時点で、その相続人はAさんです。

本来であれば、Aさんが相続人である間に相続の手続きを済ませておけばよかったものの、何やかんやしているうちに、その当人であるAさんがお亡くなりになってしまう。

そのため、Aさんが相続したXさんの権利を、更に、Aさんの相続人であるBさんとCさんが相続するということになったのです。

 

ここまで分かりましたでしょうか。

 

このように見てみると、当たり前といえば当たり前の話なのですが、

代襲相続という言葉だけ知っている依頼者の方から、2番目の相続事例のケースで配偶者の○さんには、相続権はありませんよね?と聞かれることがありましたので、混同しやすい二つの相続事例の違いを簡単に説明させていただきました。

 

以上のとおり、相続においては相続人が誰であるか、ということは実は非常に重要です。

相続人が一人でも欠けた状態でなされた遺産分割協議は無効となりますので、

もう一人、相続人がいた。なんて事になった場合、一旦作成した遺産分割協議を後からやり直すなんて面倒な事が起きる可能性もあるわけです。

 

皆さまも、遺産分割協議書を作る際は、

一旦落ち着いて、誰が相続人になるのかを

きちんと調べられた上で作成されることをお薦めいたします。