兄弟の相続問題はどうしてトラブルになるのか

1 兄弟の相続問題はお金に目がくらんだ誰かが悪いのか?

かつて、仲の良かった兄弟が相続でいったんもめると、険悪になって最後には法事にも顔を出さなくなってしまう。こういうケースを多数見てきました。

兄弟の相続は何故トラブルになるのでしょうか。

相続というお金が絡んだ途端、欲に目がくらんで兄弟愛なんて吹っ飛んでしまうからでしょうか。誰かが財産目当てだから、それで話し合いが出来ずトラブルになるのでしょうか。

私は沢山の相続を扱ってきて、それはかなり表面的な見方であるような気がしてきました。

 

2 兄弟姉妹の相続のトラブルのケース(親の愛情と生前贈与と)

親のお金を管理していた兄弟と、そうでない兄弟、親から多額の生前贈与を受けている(と思われている場合も含む)兄弟と、そうでない(と思い込んでいる場合も含む)ケースで相続の話し合いは揉めます。

親からの生前贈与として兄弟が幾らもらっているのか分からない、明かさない事に、他の相続人は非常に憤慨しています。

もちろん、この憤慨には、お金を沢山とって意味でずるい!という普通の経済感覚が有ることは他の法的紛争と同じです。

しかし、相続独特の問題として、この経済的感覚にさらにプラスして、「親が私ではなく、別の兄弟を優遇した!」という点がトラブルの根本にあるのではないかというケースを沢山見てきました。

親の他の兄弟への生前贈与に、「親の愛情」を(もしかしたら誤解のケースもあるかもしれないけれども)読み取ってしまって、もらえなかった兄弟が非常に憤慨しているという構造があるように思えます。

遺産分割調停の打ち合わせなどで、「親は私ではなく兄弟の方を可愛がっていましたから」と依頼者さんが少し寂しそうに自虐的に話す場面に出くわすことがあります。

普通の相続でもめないケースの方が、トートーメ(沖縄の位牌)やお墓を押し付けあうのに対し、相続でもめているケースの方が、むしろ親のトートーメ(沖縄の位牌)とお墓も取り合う方の方が多かったのも印象的です。

 

3 長男優遇の沖縄

沖縄ですと、トートーメを承継したもの以外が財産を相続すると地獄に落ちるなどと言われ(これは明治頃に内地から入ってきた風習の影響だともいわれていますが)、相続財産を長男が全て取る、長男を優遇することが当たり前になされてきました。

また、祭祀承継も長男が取りまとめる風習があるため、トートーメがある実家を長男が相続する必要があると言って、長男にこれを継がせる必要があると言われています(とはいえ今後住宅が余っていく経済状況の中、下手したら売り抜けが利かなくなる古い家を承継させられ固定資産税を払い続けることになる長男はケースによっては非常な貧乏くじを引かされているとも言えます)。

もともとも農業が産業の中心で、相続の対象も農地だったころには、子どもが農地を細かく分けて相続してしまうと、その土地が耕作に適さなくなるため、長男一人に相続させるという風習が発生したと言われており、現代ではかかる長男一人が全財産を相続するという政策はその背景的な合理性も失われていますし、当然民法でも兄弟間の相続分は基本、頭割りです。

 

4 相続で揉めないために弁護士のアドバイス

相続でもめないためにはまず、親が生前に子どもたちに公平に財産を開示すること

上記長々と記載しましたが、相続のトラブルの本質は、「私よりお父さん、お母さんは、○○を可愛がったに違いない」という兄弟間の疑心暗鬼だったりします。

本当は、兄弟平等に可愛がり、みんなに同じだけ生前贈与をしている親もいると思われます。

でも生きているうちに親がこれを隠していたり、兄弟全員に、きちんと話しておかないと、残された兄弟は、「親はきっと●●にもっと沢山あげていて、○○はこれを隠している」と勘違いしてしまうことも多いです。

望ましくは、親が生きているうちに兄弟を集めて、財産の説明をして、公正証書の遺言を残すことが、後々の兄弟間の相続のトラブルを未然に防ぐことにつながるのではないかと思っています。

 遺言作成についてはこちらの記事をご参照ください。

5 相続で揉めてしまった場合の弁護士のアドバイス

相続で揉めてしまった場合には、誰かがひく事で分割がうまくいくこともありますが、はっきり言って、声の小さい兄弟が割を食うような分割はその後の親族関係で尾を引きます。

誰かがずっと恨みに持つような遺産分割を強引に推し進めるぐらいなら、遺産分割調停や審判をして、相続財産を第三者である裁判官に分けてもらったほうがずっと良いでしょう。また、その際、調停や審判の場がただの喧嘩の延長になるのであれば、弁護士に頼んで相互の感情的な主張を切り離す事も、トラブルのストレスを回避し兄弟間の仲が必要以上に悪くなることを防ぐことができます。

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兄弟の相続トラブルについて弁護士のアドバイスの続きを書きました。part2